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【旬の判例】~第46回 「コード事件」

第46回は、京都地裁令和4年9月21日判決の【コード事件】です。

本件は、新型コロナウイルス感染症の拡大による雇止めの有効性が争われた事案です。

1 本件の事案の概要

X氏は、Y会社と1年間の有期労働契約(以下、「本件労働契約」といいます。)を締結し就労していたところ、新型コロナウイルス感染症の拡大によりY会社の業績が悪化し、Y会社より、雇止め(以下、「本件雇止め」といいます。)を受けました。そこで、X氏は、本件雇止めが無効であると主張し、労働契約上の地位の確認及び雇止め後の賃金の支払いを求めて訴えました。

1年間の有期雇用契約を締結したとしても、契約期間満了時に雇止めとすることは法律上規制されており、労働契約法第19条において、有期労働契約が更新される合理的な期待が認められることを前提として、雇止めに客観的合理性がなく、社会的相当性もない場合には、雇止めはできないものとされています。

本件でも、同条に基づき、⑴雇用継続の合理的期待の有無、⑵本件雇止めの客観的合理性・社会的相当性の有無が争点となりました。

2 雇用継続の合理的期待の有無

本件労働契約は、X氏の業務内容自体、資格や特殊な技能を必要とするものではありませんでした。また、X氏の勤務日及び勤務時間は、週3日、1日当たり4時間50分とするパート契約であり、その契約期間は1年とされていました。

これらの事実から、裁判所は、Y会社において、本件労働契約を有期労働契約とした目的に相応の合理性があり、X氏の担当業務は代替可能なものであると判断しました。

加えて、裁判所は、X氏の契約期間である1年を経過した後の契約更新については、あくまで毎年1年間毎の契約更新となる旨定められており、雇止めとなる5か月前の面談時には必ずしも契約更新とならない旨示唆されていたことから、X氏においては、本件労働契約が1年であることを十分に認識していたと判断しました。

上記の他、従前の更新回数が僅か1回であったこと、試用期間を含めても、雇用通算期間は、合計2年3ヶ月と比較的短期間に留まっていたことも考慮し、結論として、X氏の指摘する、契約更新される年齢の上限が60歳と定められていたことや、1回目の契約更新時に契約更新の意思確認なく自動的に更新となった事実を十分考慮したとしても、X氏の雇用継続に対する合理的期待を認めるのは難しく、そうでないとしても、その程度は必ずしも高いものということはできないと判示しました。

3 本件雇止めの客観的合理性・社会的相当性

裁判所が本件雇止めの客観的合理性・社会的相当性を判断するに際し、考慮した諸事情は以下の通りです。

①Y会社では、新型コロナウイルス感染症が拡大する前から赤字経営が続いており、新型コロナウイルス感染症の拡大により更なる売上の悪化を重ねたこと。

②一部の無期雇用従業員と全てのパート従業員を休業とし、また、勤続年数の長いパート従業員2名に対し退職勧奨を行い退職させていること、さらには、夏季賞与を不支給とする旨決定していたこと。

③X氏の労働契約の期間満了時には、雇用調整助成金の特例措置を延長する旨の報道がなされていたが、緊急雇用安定助成金等の拡充制度の延長の有無及びその内容期間は依然として定まっていなかったこと。

④X氏と同じ製造部に所属するもう1名のパート従業員は、X氏よりも前に採用され、当時すでに2度の契約更新を経て、通算雇用期間も3年となっていたこと。

⑤Y会社は、契約期間満了の約1ヶ月前には、理由を付して契約更新に応じられない旨通知し、団体交渉の席上においても、業績が芳しくないためX氏を雇止めする旨説明していたこと。

裁判所は上記事情を総合考慮して、本件雇止めが、客観的合理性・社会的相当性を欠いたものということはできないと判示しました。

以上から、裁判所は、本件雇止めは適法であり、X氏の労働契約上の地位及び本件雇止め後の賃金の支払い等を求める請求を棄却しました。

いかがでしたでしょうか。本件では、上記の事情を考慮して、雇止めは適法とされましたが、状況によっては、雇止めが違法となり、雇止め後の賃金の支払いに応じなくてはならないケースもあります。新型コロナウイルスの蔓延が落ち着いた今日においても、売上が中々戻らず、雇止めを強いられるケースが多く散見されます。雇止めの判断に迷われた際は、ぜひ本裁判例を参考にしていただければ幸いです。

弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)

札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

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