『ビジネス法務』2024年4月号の特集1は「独禁法・競争法の最重要テーマ20」です。この中のトピックとして「ステマ規制への対応」(執筆:森大樹弁護士)があります。広告であるにもかかわらず、広告であることを隠す、いわゆるステルスマーケティング(ステマ)について解説されています。
- Ⅰ ステマ規制の導入
- Ⅱ ステマ規制の概要とビジネスへの影響
- Ⅲ インフルエンサーやアフィリエイターを用いたプロモーション活動における留意点
- Ⅳ 従業員によるSNSを利用した情報発信における留意点
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
皆様、「ステマ」という言葉をご存じでしょうか。広告であるにもかかわらず広告であることを隠すいわゆる「ステルスマーケティング」のことをいいます。例えば、企業が、YouTube上のインフルエンサーなどに、企業が広告したい商品をあたかもインフルエンサーが普段から使用しているかのようなコンテンツを制作・発信させていることが散見されます。このような企業の広告であることを隠している広告のことを「ステマ」といいます。
これまでは、ステマというだけでは、景品表示法に違反することにはなりませんでした。しかしながら、令和5年10月より、新たに、景品表示法5条3項に基づき、「ステマ告示」、「ステマ告示運用基準」が公表され、ステマが規制されるに至りました。本記事では、この新たに整備されたステマ規制についての解説及び企業側がとるべき未然の防止策についての説明がなされています。
「ステマ告示」は、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」を禁止しています。そして、この基準の具体的な行動指針として、「ステマ告示運用基準」が機能しています。
ステマ告示に違反した場合、企業には、措置命令がなされることになり(景品表示法7条1項、8条1項)、その場合には広く報道されることが通例です。そのため、違反した場合の企業のレピュテーションに与える影響は大きいものと考えられ、企業には、ステマ告示に抵触するようなマーケティング活動の未然防止が求められます。
上記インフルエンサーの例によれば、企業は、インフルエンサーの制作・発信するコンテンツ内において、広告、プロモーション、PR等といった文言を表示させることによって、一般消費者にとって事業者の表示であることを明瞭にする必要があるといえます。
その他にも、企業の従業員が会社から何の指示や命令も受けていないにもかかわらず、個人のSNS等で、自社の商品の感想等を発信した場合であっても、同様にステマ告示に抵触する可能性があるため注意が必要です。
いかがでしたでしょうか。新たに整備されたステマ規制について紹介させていただきました。
新たにステマが規制はされましたが、実態としては、ステマに当たるか否かがあいまいなケースはまだまだ多く、グレーゾーンがあるのも事実です。しかしながら、企業のレピュテーションリスクを考慮して、グレーゾーンを狙うよりも、企業としてのプロモーション活動の一環であることを明確にすることをもって、一般消費者に対して、より誠実な企業であると評価されることが望ましいといえます。
弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)
札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)