『ビジネス法務』2024年9月号の実務解説は「令和6年度育児・介護休業法改正の要点」です(執筆:樋口陽亮弁護士)。2024年5月、育児・介護休業法等を改正する法律が成立。本改正法の施行は2025年4月1日から順次予定されています。この概要と実務対応のポイントが、本稿で解説されています。
- Ⅰ 子の年齢に応じた柔軟な働き方を実現するための措置の拡充
- 1柔軟な働き方を実現するための措置および当該措置の周知・意向確認義務の創設
- 2所定外労働の制限の対象拡大
- 3テレワークの活用促進
- 4短時間勤務制度の代替措置としてのテレワークの追加
- 5子の看護休暇の適用範囲の拡大
- 6仕事と育児の両立に係る労働者の個別の意向の聴取と配慮
- Ⅱ 育児休業の取得状況の公表義務の拡大や次世代育成支援対策の推進・強化
- 1育休取得率の公表義務の拡大
- 2育児休業の取得状況等にかかる状況把握・数値目標の設定義務の新設
- Ⅲ 介護離職防止のための仕事と介護の両立支援制度の強化等
- 1介護申請時における仕事と介護の両立支援制度の周知・意向確認義務の新設
- 2労働者等への両立支援制度等に関する早期の情報提供、雇用環境の整備
- 3介護休暇の対象労働者の範囲の拡大
- 4家族を介護する労働者へのテレワーク導入
- Ⅳ 実務上の対応ポイント
- 1個別周知・意向確認等の措置
- 2就業規則・社内様式類の改訂
- 3労使協定の締結
- 4育児休暇等の取得状況の公表義務化等
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本稿では、令和6年5月24日に成立した『改正育児・介護休業法』について解説がされています(元執筆者:樋口陽亮弁護士)。
2 改正の概要
現行の育児・介護休業法について、育児・介護休業制度の利用期間が伸長されるとともに、事業者の育児・介護休業制度の利用促進義務が拡大されました。
3 改正の具定例
①テレワークの活用促進
3歳未満の子を養育する労働者を対象として事業主が講じる措置の内容に、「テレワーク」が努力義務項目として追加されました。
②育児期間中の柔軟な働き方を講じる義務
本改正によって、事業主は、3歳以上小学校就業までの子を養育する労働者を対象とする新しい制度として、フレックスタイム制・在宅勤務・所定労働時間の短縮等の中から2つを選択して、体制を整備し、労働者がその2つのうち希望する方を選択できるようにすること、その制度について周知することを義務付けました。
③看護休暇の拡大
・現行法
期間:小学校就業前まで
目的:子の疾病看護に限定
・改正法
期間:小学校3年生終了時までに伸長
目的:子の疾病看護、子の行事(入園式等)に拡大
④育休取得率公表義務の拡大
現行法では、労働者数が1000人を超える事業主に対して、育児休業の取得状況を公表することを義務付けていましたが、改正法では、労働者数が300人を超える事業主に対して、育児休業の取得状況を公表することを義務付けました。
⑤介護休業制度に関する周知義務
労働者が介護の問題に直面したことを事業者に申し出た場合には、介護支援制度についての個別周知、意向確認を行うことを事業者に義務付けました。
4 おわりに
今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。改正法に対応するためには、就業規則の改定も必要になるところです。
改正法は、公布日(令和6年5月31日)から1年6か月以内に施行されることとなっておりますので、事業主の皆様におかれましては、それまでに、育児介護休業に関する制度の選択、就業規則の変更をご検討くださいませ。
弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)