弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】事業連携・出資の適正化へ「スタートアップ指針」のポイント

『ビジネス法務』2022年8月号の実務解説は「事業連携・出資の適正化へ『スタートアップ指針』のポイント」です。ウィズコロナ・ポストコロナの大変化のなかで、われわれの社会制度や生活習慣は急速に変化してきています。この変化の過程で生じる社会的な課題を迅速に解決するためには、企業によるオープンイノベーションの実践が不可欠です。イノベーションの重要な担い手となるのがスタートアップですが。日本においては成長するスタートアップが欧米・中国に比べ格段に少ないことが指摘されています。このスタートアップの創出を促進するエコシステムの整備が急務となっています。そのポイントが解説されています。

  • Ⅰ 「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」の公表
  • Ⅱ 問題事例とその解決の方向性
  •  1 NDA(秘密保持契約)
  •  2 共同研究開発契約・ライセンス契約
  •  3 出資契約における株式買取請求権
  • Ⅲ 今後の展望

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

本記事では、令和4年3月31日に公正取引委員会及び経済産業省より公表された「スタートアップとの事業連携及びスタートアップへの出資に関する指針」(以下、「本指針」といいます。)の解説が行われています。
本指針では、スタートアップ企業と連携事業者(スタートアップ企業と事業連携を行う企業)や出資者との間のあるべき契約の姿・考え方が提示されています。その背景には、資金力や実績等の乏しいスタートアップ企業が、連携事業者や出資者との関係で劣位に陥りやすく、不当な内容の契約を締結してしまう傾向にあることが挙げられます。本指針は、このような取引実態の適正化を図り、スタートアップ企業と連携事業者・出資者間の、公平で継続的な関係を基礎としたオープンイノベーションを促進させるために、策定・公表されました。
本指針では、スタートアップ企業との事業連携に関し、秘密保持契約(NDA)、技術検証契約(PoC)、共同研究契約、及び、ライセンス契約の4つの契約類型について、それぞれ問題事例が紹介され、独占禁止法上の問題点の指摘や解決の方向性が示されています。また、スタートアップ企業との出資契約に関し、営業秘密の開示やNDA違反等の9つの問題事例を取り上げ、各事例における独占禁止法上の問題点と解決の方向性が示されています。
本記事で取り上げられている一例を紹介します。秘密保持契約(NDA)に関して、スタートアップ企業が連携事業者や出資者からNDAを締結しないまま営業秘密の開示を要請される場合、スタートアップ企業のみ秘密保持義務・営業秘密の開示義務を課せられる場合等において、優越的地位の濫用(独占禁止法2条9項5号。自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、正常な商慣習に照らして不当に、独占禁止法2条9項5号に列挙されている行為をすること。)が問題となる可能性があります。スタートアップ企業の技術・ノウハウ等を守るためにも、早期に双方向的なNDAを締結することが求められます。
本記事では、本指針で取り上げられている問題事例や独占禁止法上の問題点が簡潔にまとめられています。この機会に是非ご一読ください。

弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)

札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

最近のコラム