『ビジネス法務』2023年3月号の実務解説では「こんなに使える!不競法(上)」(弁護士 渡邉 遼太郎 先生 著)が取り上げられています。不正競争防止法は広範な法目的を持ち、他の知的財産法や競争法の補完的な役割を担うことも多い法律。本稿では、ブランド保護にあたっての商標法と比較しての不正競争防止法の活用可能性や、デザイン保護にあたっての意匠法・著作権法と比較しての不正競争防止法の活用可能性について紹介されています。
- Ⅰ はじめに
- Ⅱ 不正競争防止法の概要
- Ⅲ ブランド保護と不正競争防止法
- 1商標法による保護の課題
- 2不正競争防止法の活用
- Ⅳ デザイン保護と不正競争防止法
- 1意匠法・著作権法による保護の課題
- 2不正競争防止法の活用
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
1 はじめに
本記事では、不正競争防止法(以下「不競法」といいます。)を活用した①ブランド保護、②デザイン保護について、他の法令と比較した場合の利点・留意事項の解説がされています。
デザイン保護との関係でいえば、近時は、「マリオカート」(いわゆる「マリカー」)のコスチュームを公道カートのレンタル客に貸与する行為が不競法2条1項2号の不正競争行為に該当するとした裁判例もみられるところであり、注目度が高まっている法律です。
2 ①不競法によるブランド保護
ブランドの保護を図ろうとする場合、商標法によるブランドの保護を検討することが一般的であるかもしれません。
しかし、商標権(商標法25条)を行使するには、事前の商標登録が必要となっており、この点がハードルとなって商標法ではブランドの保護が図れないケースが少なくありません。
他方、不競法(2条1項1号・2号)の場合には、事前の登録が求められていないため、仮に、商標登録していない自社ブランドの表示が侵害された場合でも、保護の対象になり得ます。
3 ②不競法によるデザイン保護
デザインの保護を図ろうとする場合、まずは意匠法・著作権法による保護を検討することが考えられるかもしれません。
しかし、意匠法によるデザインの保護を図ろうとする場合は、事前に意匠登録をしておくことが必要になりますが、意匠登録には一定の費用・期間がかかるため、ファッション業界などライフサイクルの短い商品を販売する場合には意匠法の活用は困難であることが指摘されています。また、著作権法との関係でも、美的創作物が著作物として保護されるためのハードルは、低くはありません。
他方、不競法(2条1項3号)の場合には、事前の登録は求められておらず、また、著作権法とは異なって、「商品の形態」を正面から保護の対象としているため、商品の形態であれば広く保護の対象になっています。
4 おわりに
本記事では、他の法令と比較した不競法の利点のほかに、不競法によるブランド・デザイン保護を図ろうとする場合の留意事項についても解説がされています。
概要だけ簡単に記載しますと、①ブランド保護との関係では、周知性・著名性が要求されていることや、②デザイン保護との関係では、意匠権に比して保護期間が短いことなどです。
今回もお目通しいただき、ありがとうございました。本記事は、聞き覚えのある商品に関する裁判例等も引用されながら解説されておりますので、ぜひ、不競法を活用したブランド・デザイン保護を図る場合の利点、留意事項について、ご一読いただけましたら幸いです。
弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)
第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。
協力:中央経済社