弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】ステルスマーケティング規制と今後の対応策

『ビジネス法務』2023年6月号の実務解説は「ステルスマーケティング規制と今後の対応策」(執筆:渥美雅之弁護士・渡邊隆之弁護士)です。2023年3月、消費者庁は外部有識者を含めた検討会などを経て、ステルスマーケティングを不当表示として規制する告示および運用基準を公表しました。本稿ではステルスマーケティング規制に係るこれまでの議論をまとめ、実務上の留意点について考察があります。

  • Ⅰ はじめに
  • Ⅱ ステルスマーケティングをめぐる状況
  • Ⅲ 規制の概要
  •  1規制の方向性に関する議論
  •  2本告示案
  •  3本運用基準
  •  4エンフォースメント
  • Ⅳ 実務上の留意点
  •  1内容を指定しないで行うレビューや口コミ依頼
  •  2施工日前になされた表示

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

本稿では、消費者に対して広告と認識させないまま商品・役務のPRを行うステルスマーケティング(いわゆる「ステマ」。以下この略語を用います。)規制について解説がされています。ステマ規制は、令和5年10月1日から施工されることになっており、注目度の高いテーマです。

2 ステマ規制の背景

ステマとは、正確には、『事業者による商品・役務の広告宣伝であるにも関わらず、消費者に対して広告主が明らかにされないもの』を指すとされています(消費者庁「ステルスマーケティングに関する検討会 報告書」参照)。
そして、このステマには、以下のような観点から問題があると指摘されています。
すなわち、事業者による広告であることが明示されていれば、消費者の立場からでも、当該広告にはある程度の誇張・誇大が含まれていることを考慮したうえで商品選択をすることが可能となる一方、事業者による広告であることが明示されておらず、インフルエンサーや消費者等の第三者による商品・役務に関する広告の場合、消費者の立場からは、誇張・誇大を割り引いて判断することが難しくなり、消費者の商品選択における合理的な判断が阻害されることになるという点です。 

3 令和5年10月1日施行のステマ規制

今回の規制では、「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示であって、一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」が景品表示法5条3号(消費者庁による指定告示制度)の対象となります。これに違反した場合には、措置命令が出され、措置命令に違反した場合には、2年以下の懲役又は300万円以下の罰金が科されることとなります(同法36条1項)。

4 ステマ規制の具体例

(1)上記「事業者が自己の供給する商品又は役務の取引について行う表示」について

実際の表示がインフルエンサーや消費者等の第三者により行われている場合であっても、事業者がこれらの表示主体者に金銭を支払って広告の委託をしている場合や、これらの表示主体者に事業者が指示を与えて広告をさせているような場合には、この要件に該当するとされている点には留意が必要です。

(2)上記「一般消費者が当該表示であることを判別することが困難であると認められるもの」について

 この要件に該当しない(ステマではない)とされるためには、①事業者自身のウェブサイトや、事業者自身のSNSアカウントにおいて広告を発信することや、②インフルエンサー等に広告を依頼する場合には、「広告」、「プロモーション」といった文言を表示して、事業者による商品・役務の宣伝であることを消費者に認識させることが必要になります。

5、おわりに

今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
ユーチューバーによる商品・役務の紹介動画等、ステマは身近なところに潜んでいます。消費者の立場からご自身を守るためにも、事業者の立場から商品・役務を適法に広告するためにも、ぜひ、本稿をご一読いただきお役に立てていただければ幸いです。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)

第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

最近のコラム