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【ビジネス法務】法務部が知っておきたい所有者不明土地関連法

『ビジネス法務』2023年6月号の実務解説は「法務部が知っておきたい所有者不明土地関連法」(執筆:荒井達也弁護士)です。令和3年、民法および不動産登記法の改正などを中心とする近年の所有者不明土地関連法には、民法の物権法や相続法を現代化するための改正が少なからず存在します。この令和3年改正民法・改正不登法・相続土地国庫帰属法を中心に法務部が知っておきたいポイントが解説されています。

  • Ⅰ はじめに
  • Ⅱ 不動産以外にも適用される新ルール
  •  1共有制度の見直し
  •  2相続制度の見直し
  •  3実務への影響
  • Ⅲ 通常の不動産にも適用される新ルール
  •  1相隣関係の見直し
  •  2管理不全土地・建物管理制度の創設
  •  3商号・本店所在地の変更登記の義務化
  •  4相続登記の義務化と所有不動産記録証明制度の創設
  •  5相続土地国庫帰属制度の創設
  •  6実務への影響
  • Ⅳ 所有者不明不動産に適用される新ルール
  •  1所有者不明土地・建物の管理制度
  •  2所有者不明共有者がいる場合の非訴訟手続きの創設
  • 3実務への影響

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

 本記事では、令和3年4月に改正がなされた民法・不動産登記法、及び、新たに創設された相続土地国庫帰属法、いわゆる所有者不明土地関連法に関する解説がなされています(なお、施行時期について、令和5年4月1日から段階的に施行されます。)。

 所有者不明土地とは、不動産登記簿に書かれている土地の所有者の氏名や住所が、真の所有者のものとは異なっている土地のことを指します。所有者不明土地の弊害について、土地の取引の阻害要因となったり、土地の管理不全により隣接地に悪影響が発生したりするといったものが挙げられます。所有者不明土地関連法は、主に、このような所有者不明土地の発生の予防や所有者不明土地の利用の円滑化という観点から改正・施行されました。

 本記事では、所有者不明土地関連法の中でも、企業活動に影響を及ぼしうる制度を中心に解説がなされています。

 例えば、共有制度に関して、共有物を管理する局面において、一部の共有者の所在が不明であったり、一部の共有者の賛否が不明であったりする場合、裁判手続を通じて当該共有者を除外した上で、残りの共有者間で共有物の管理にかかる意思決定をすることができる制度が新設されました(民法252条2項。令和5年4月1日施行)。当該制度について、例えば、株主に相続問題が発生して特定の株式につき相続人の共有状態が形成された場合、共有者の内の誰が株式の権利を行使するか決める局面(会社法106条)において、当該制度が利用される可能性が考えられます。

 また、管理が行き届いていないことにより、近隣の権利利益を侵害している土地について、利害関係人の申立てにより、管理不全土地管理人を選任させることができる制度が新設されました(民法264条の9。令和5年4月1日施行。)。自社の近隣において、このような管理不全の土地がある場合、当該制度を通じて状況を改善することができる余地があります。また、逆に、何らかの理由により自社の土地が管理不全状態となってしまった場合、近隣住民から管理不全土地管理人の選任申立てがなされ、自社の土地が裁判所の管理下に入ってしまう可能性がある点に注意が必要です。

 本記事では、他にも、相続登記の義務化や相続土地国庫帰属制度等といった、所有者不明土地関連法のポイントについての紹介がなされています。この機会に是非ご一読ください。

弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)

札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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