弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】法務部が知っておくべき景表法の最新論点〜打消し表示・強調表示

『ビジネス法務』2024年1月号の連載は「法務部が知っておくべき景表法の最新論点」です。その連載の第3回目は「打消し表示・強調表示」(執筆:渡辺大祐弁護士)になっています。事業者は自己の販売する商品・サービスを一般消費者にアピールするため、広告において目立つ表現を用いて品質や価格を強調することがあります。その際、態様によっては問題となりうることがあります。本稿では、打消し表示・強調表示に関する論点が解説されています。

  • Ⅰ はじめに
  • Ⅱ 強調表示と打消し表示
  •  1強調表示と打消し表示
  •  2強調表示の原則と打消し表示の落とし穴
  •  3景品表示法の打消し表示の考え方
  • Ⅲ 設問の解説
  •  1設問①
  •  2設問②

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 強調表示と打消し表示について

月に一定の金額を支払うことで、コミックが見放題になるプランを提供するサービスにおいて、その広告で「月額○○円でコミック見放題!!」と表示しているが、当該見放題プランの対象には、発売から2か月以内の新作のカテゴリーに分類されるコミックが含まれていない場合、当該広告の表示に問題はないでしょうか。

この「月額○○円でコミック見放題!!」という表示が、強調表示に該当します。

強調表示とは、事業者が、自己の販売する商品等を一般消費者に訴求する方法として、断定的な表現や目立つ表現などを使って、品質等の内容や価格等の取引条件を強調した表示をいいます。

上記コミック見放題プランでは、新作については対象外となることから、新作の例外がある旨表示をしなければなりません。そうでなければ一般消費者は全てのコミックが見放題の対象となると誤認するおそれがあり、違法な不当表示となってしまいます。このような例外についての表示が、打消し表示に該当します。

打消し表示とは、強調表示からは一般消費者が通常は予期できない事項であって、一般消費者が商品等を選択するにあたって重要な考慮要素となるものに関する表示をいいます。

2 「月額○○円でコミック見放題!!」のように強調表示をすること自体、それが事実に反するものでなければ、何ら問題はありません。もっとも、上記コミック見放題プランでは新作の例外がありますが、例外がある場合も、新作の例外がある旨の適切な打消し表示をしていれば、問題なく強調表示をすることができます。

しかしながら、適切な打消し表示ができていない広告が散見されており、近年、消費者庁もこのことを問題視しています。

以下では、不当表示に該当し得る不適切な打消し表示について説明します。

上記コミック見放題プランでは、新作の例外があるので、例外があるのに、単に「月額○○円でコミック見放題!!」とだけ強調表示をすることは不当表示となり得ます。例外があることの打消し表示がなくてはなりません。

そして、例外についての打消し表示の方法としても、単に「※一部例外があります」と表示するだけでは、一般消費者が例外の内容を十分に理解することができないため、これも不当表示に当たるおそれがあります。

また、「※新作については対象外」である旨明示したとしても、新作の定義が一般消費者にはわからないものであるため、「発売から2か月以内のコミックが新作として対象外」となることまで明記しなければならないといえます。

次に、「発売から2か月以内のコミックが新作として対象外」となる旨の適切な内容の打消し表示があったとしても、その打消し表示の方法が、強調表示に対してあまりに小さく表示されていたり、強調表示と離れて表示されている場合には、一般消費者が打消し表示であると適切に認識できない可能性があるため、これも不当表示に該当するおそれがあります。

例えば、当該広告の表示が、ウェブサイトである場合、強調表示と打消し表示が同一画面上になく、スクロールしなければ打消し表示を確認できないといった場合も、一般消費者の誤認を招き不当表示となるおそれがあるといえます。

他にも、月額○○円でコミック見放題!!との強調表示の背景や周りに新作のコミックが掲載されている場合は、一般消費者は新作も見放題の対象に含まれていると誤認するであろうことから、不当表示となるおそれがあり、避けるべきといえます。

3 打消し表示が問題となり得る別の広告事例についても見ていきましょう。

脂肪燃焼サプリメントの広告で、「皆様から喜びの声がこんなに届いています!」との表示とあわせて、「お腹の肉がすっきりした(40代女性)」といった表示をするとともに、「※個人の感想です」といった表示をすることは問題ないでしょうか。

「お腹の肉がすっきりした(40代女性)」などの表示は、体験談を用いた強調表示であり、体験談を見た一般消費者は、「大体の人に効果がある」との認識を抱くため、「※個人の感想です」などの打消し表示に気づいても、「大体の人に効果がある」との認識が改められる可能性は低く、打消し表示としては十分ではありません。

適切な打消し表示といえるためには、体験者等に対する事業者が行った調査における、体験者の数及びその属性、そのうち体験談と同じような効果、性能等が得られた者・得られなかった者が占める割合等まで明瞭に表示する必要があります。

4 いかがでしたでしょうか。今回は、「強調表示と打消し表示」の記事について紹介させていただきました。本記事から、強調表示を行う上で、例外等がある場合には、表示方法に注意を払い、適切な打消し表示をしなければならないことがわかります。強調表示を用いた広告を行う上で、違法な不当表示とみなされることのないよう、ぜひ本記事をご一読していただけますと幸いです。

弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)

札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

最近のコラム