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【ビジネス法務】「オワハラ」をめぐる法的問題と採用活動上の留意点

『ビジネス法務』2024年3月号の実務解説は「『オワハラ』をめぐる法的問題と採用活動上の留意点」(執筆:金東煥弁護士)です。企業の採用活動適正化のため、2023年4月に政府は日本経済団体連合会(経団連)に要請文を出しました。この要請文には、就職活動段階のハラスメント防止の徹底が盛り込まれています。本稿では、この時問題となる「オワハラ」の類型や事例、採用活動上の留意点などが整理され、解説されています。

  • Ⅰ オワハラの概要
  •  1オワハラとは
  •  2オワハラが生じた背景と実態
  • Ⅱ オワハラの類型
  •  1交渉型・内定引き換え型
  •  2拘束型・同情型
  •  3強制型・脅迫型
  • Ⅲ 採用活動で留意すべき点、オワハラと評価された場合の対応
  •  1採用活動で留意すべき点
  •  2オワハラと評価がされた場合の対応

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

本稿では、企業の「オワハラ」をめぐる留意点が解説されています。
オワハラとは、「就活終われハラスメント」の略称で、就職活動をする学生の意思に反して、企業が就職活動の終了を強要するハラスメント行為を指す言葉です。
政府は、2023年4月10日に、就職・採用活動段階でのハラスメント防止を内容に盛り込んだ要請を経団連に対して出しており、「パワハラ」「セクハラ」と同様、企業にとって留意が必要となります。

2 オワハラの背景

「オワハラ」が問題となった背景には、経団連が、2015年に、政府の要望に応じて選考採用の開始時期を8月以降にしたことが影響しています。
これにより、経団連に加入していない中小企業が早くから選考を開始し、大企業に人材が流れないようにするために「オワハラ」が横行しました。
内閣府が2022年に実施した調査結果よれば、約1割の学生が企業からオワハラを受けたとの回答をしました。

3 オワハラの具体例

オワハラには、以下のような類型があります。

①正式内定前の時期に、内々定を出す代わりに他社への就職活動を止めるように強要するケース。
②内定後入社前の時期に、囲い込みのために研修会や懇親会への出席を義務付けるケース。
③内定辞退を申し出た就活者に対し、引き留めのために長時間にわたって説得又は叱責をするケース。

4 企業の留意点

①学生が内定承諾書を提出した場合であっても、内定を辞退することは学生の職業選択の自由(憲法22条1項)ですので、上記のような内容が記載されている内定承諾書が法的拘束力を持つことは基本的にはありません。
企業は、内定が欲しい学生の心情を理解して、採用面接の場で内定承諾の意思を確認することは控えるべきです。

②就活者が学生の場合には、学生の本業である授業への出席等に影響が生じないように十分に配慮をしたうえで研修会等のスケジュールを調整し、かつ、出席ができなくても内定を取り消されるなどといった不利益は生じないことを事前に伝えるのが望ましいです。

③特に近年では、採用面接時のようすをスマートフォンで録音・録画している学生も少なくなく、企業の「オワハラ」がSNS等で拡散されれば、企業価値の毀損にもつながりかねません。

5 おわりに

今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
「パワハラ」、「セクハラ」、「モラハラ」などと比べると、まだ馴染みのない言葉であるかもしれませんが、本稿が読者の皆様方における採用活動の在り方を見直すきっかけとなれば幸いです。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)

第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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