『ビジネス法務』2024年5月号の特集1は「秘密保持契約のベストプラクティス」です。その中に「営業秘密漏えい確認後の実務対応」(執筆:森本大介弁護士)があります。営業秘密漏えい事案では、漏えい者や営業秘密の取得者に対するアクションを含め、さまざまな対外対応を行う必要があります。転ばぬ先の杖として、営業秘密の漏えいがあった場合の対応方法について、実務対応についての解説があります。
- Ⅰ 営業秘密漏えい時の各種対応の概要
- Ⅱ 個人情報保護法上の対応
- Ⅲ 法的構成の検討
- 1秘密保持契約違反にもとづく損害賠償請求
- 2不正競争防止法上の請求
- Ⅳ 民事上の請求
- 1証拠保全の申立て
- 2仮処分の申立て
- 3相手方との交渉
- 4民事訴訟の提起
- Ⅴ 刑事告訴
- Ⅵ 公表等
- Ⅶ 不正競争防止法の改正
- Ⅷ 結びに代えて
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、営業秘密の漏洩事故が発生した場合における実務対応についての解説がなされています。
まず、漏洩した秘密情報の中に個人情報が含まれている場合、漏洩(滅失・毀損の場合を含む)の内容・程度如何によっては、個人情報保護委員会に対し、個人情報の漏洩事故が発生した旨を報告しなければなりません(個人情報の保護に関する法律第26条1項)。
具体的には、①要配慮個人情報(人種・信条・社会的身分・病歴・犯罪の経歴・身体傷害等のような、不当な差別・偏見が生じる可能性のある個人情報)が含まれる個人データの漏洩等が発生し、又は発生したおそれがある場合、②不正に利用されることにより財産的被害が生じる恐れのある個人データの漏洩等が発生し、又は発生した恐れがある場合、③不正の目的をもって行われたおそれがある個人データの漏洩等の事故が発生し、又は発生した恐れがある場合、④漏洩件数が1000件を超える個人データの漏洩等の事故が発生し、又は発生した恐れがある場合、個人情報保護委員会に対し、その旨を報告しなければなりません(個人情報の保護に関する法律施行規則第7条)。
次に、営業秘密の漏洩事故が発生した場合の法的対応について、漏洩者に対する損害賠償請求(秘密保持契約違反に基づく損害賠償請求や不法行為に基づく損害賠償請求、不正競争防止法に基づく損害賠償請求)や営業秘密の使用の差止請求などの対応が考えられます。具体的な手法としては、①民事訴訟を提起する前の証拠収集のために行われる証拠保全の申立て、②損害の拡大を防止するために行われる営業秘密使用差止の仮処分、③漏洩者との間の直接交渉、④民事訴訟の提起の手法が考えられます。
本記事では、営業秘密の漏洩事故が発生した場合の事後対応が詳しく解説されている他、漏洩事故発生直後の初動対応・調査対応等が詳しく解説されています。この機会に是非ご一読ください。
弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)
札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)