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【ビジネス法務】令和6年民法改正要綱案の解説

『ビジネス法務』2024年7月号の実務解説は「令和6年民法改正要綱案の解説〜離婚後に父母双方を親権者と定める場合の規律等」です(執筆:大和田準弁護士)。2024年1月、法制審議会家族法制部会は未成年者の父母が離婚をするときは、その一方を親権者と定めなければならないとする民法の規定を改め、離婚後も双方を親権者と定めることができるようにする民法改正要綱案を取りまとめました。この要綱案が解説されています。

  • Ⅰ 令和6年民法改正要綱案の作成過程
  •  1平成23年民法改正以降の本改正に向けた動静
  •  2法制審議会家族法制部会における要綱案の取りまとめ
  • Ⅱ 「家族法制の見直しに関する要綱案」の要点
  •  1離婚後の父母双方を親権者と定めうる制度に関する規律
  •  2養育費等に関する規律
  •  3父母の責務、親子交流、養子、財産分与その他の規律
  •  4施行時期

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

本稿では、令和6年民法改正要綱案の解説がなされています。
令和6年民法改正によって、離婚の際の子の養育のあり方について大きく改正がなされました。

1 離婚後の父母共同親権の導入

(1)我が国においては、現行民法第819条1項で、「父母が離婚するときはその一方を親権者と定めなければならない。」(単独親権)とされています。令和6年民法改正要綱案(以下、「改正要綱案」といいます。)では、この単独親権についての規定を見直し、父母の父母双方を親権者と定めることができるとしました。また、改正前に離婚し、父母の一方に単独親権を定めた場合でも、父母双方の親権に変更することができるとしました。

離婚後も共同親権となることで、離れて暮らす親側と子との関係が希薄になることを防止する効果が期待されています。

このような改正要綱案が取りまとめられた背景としては、父母の離婚に伴い子が置かれる生活、経済状況への影響や離婚後の非監護親と子との交流のあり方の問題、さらには、女性の社会進出や育児のあり方、国民意識の多様化といった社会情勢があるとされています。

(2)父母の共同親権となった場合、現行民法第818条3項において、親権は父母が共同して行う必要があると定められていますが、改正要綱案においても親権の共同行使に関する規定は異なるところはありません。

もっとも、改正要綱案では、父母双方に親権がある場合でも、一方が単独で親権を行使できる場合について明文化されました。①他方が親権を行うことができないとき、②子の利益のため急迫の事情があるとき、③子の監護及び教育に関する日常の行為を行うときには、単独で親権を行使できるとしました。また、改正要綱案では、「父又は母の請求により、当該事項に係る親権の行使を父母の一方が単独ですることができる旨を定めること」を可能としました。

2 養育費等に関する規律

(1)改正要綱案では、養育費等の請求権に一般の先取特権を付与することとしました。これにより、通常、差押等の強制執行手続をするには、裁判手続で判決を取得しなければならないところ、養育費等の請求権の存在を証する文書を執行機関に提出することで他の債権者に先立って弁済を受けることができるようになります。

(2)改正要綱案では、父母が養育費の取決めをすることなく協議上の離婚をした場合であっても、離婚の時から、養育費の取り決めがなされるまでの間、「政省令で定めるところにより算定した額」(法定養育費)の支払を請求することができるとしました。これにより、少なくとも一定額の養育費が支払われるようになることが期待されます。

3 結語

令和6年の民法改正により、上記の通り、離婚に伴う子の養育のあり方について大きく変更がなされました。

上記の他にも、改正案では、面会交流を早期に実現するために、婚姻中別居時の親子交流に関する規律を明文化するなど様々な改正内容があります。

一法律家としても、親の離婚によって子供に与える不利益が少なくなるよう法律が整備されたことは、大変喜ばしく感じられます。 改正民法案は、令和6年5月17日に賛成多数で可決し、成立しており、令和8年までに施行される予定です。令和6年の民法改正内容を詳しく知りたい方はぜひ一度ご覧になってください。

弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)

札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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