弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】契約書をめぐる社会情勢・関連法令への対応方法

『ビジネス法務』2023年5月号の特集1は「契約書『変更・更新・終了』の実務」です。その中で「契約書をめぐる社会情勢・関連法令への対応方法」(執筆:石原遥平弁護士 川井田渚弁護士)があります。社会情勢の変化が契約変更や契約更新に与える影響について概要をまとめ、その問題点について考察がなされています。

  • Ⅰ 実際に問題となる事例の考察
  • Ⅱ 契約書確認のポイント
  • Ⅲ 契約書に記載してあること以外に注意すべきこと
  • Ⅳ 契約書作成の場合の留意点
  • Ⅴ 法的なリスク以外のリスクとその回避・軽減方法
  • Ⅵ CLMという新たな潮流
  • Ⅶ 利用規約/プライバシーポリシーの変更

 <PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

 本稿では、近年、新型コロナウイルスの世界的な流行、半導体不足、建築資材の高騰、ウクライナ侵攻、急激な円安といった社会情勢の変化が著しい中で、そのような社会情勢の変化によって、特に長期間にわたる契約の場合、契約変更や契約更新が問題となり得ることについて提言されております。その上で、そのような契約変更や契約更新が問題となった際又は問題となる前に、契約当事者が取るべき対応についての解説がなされております。

2 社会情勢の変化により契約内容の変更が問題となるケース

 例えば、産業機械の製作を請け負ったが、半導体不足により納期の延長を余儀なくされた場合、請け負った側はどのような手段をとるべきかが問題となります。
 このような場合、まず契約書を確認し、契約内容の変更に関する定めがあるか否かを確認することとなります。契約書に契約変更事由の定めがあるとしても、事前に半導体不足と明示的に定められていることはほとんどないため、半導体不足が契約変更事由に該当するか解釈により判断していくこととなります。

 また、契約書の条項以外にも法律の内容にも留意すべきです。

 民法上は、契約書に定めがなければ、契約内容の変更は認められないのが原則です。しかしながら、契約の基礎となっていた事情が変化したような場合には例外的に事情変更の原則を用いて契約内容の変更を主張することができる場合があります。

 反対に、契約当事者の一方が任意に変更できる旨を定めているような場合には、法律によりそのような一方的な変更は禁止され又は制限されることがあります。
 そして、契約変更が問題となってからではなく、問題となる前に備え、契約書に適切な条項を設けておく必要があります。
 契約変更が認められる事由を予め契約書に盛り込んでおく必要があるところ、社会情勢の変化にすべて対応するような契約書を作成することは現実的ではありません。そこで、可能な限り具体的な事由を盛り込みつつも、不可抗力や正当な事由が存在する場合には契約内容の変更が認められるとするといったバスケット条項を設けておくのが望ましいです。

 3 利用規約・プライバシーポリシーの変更について

契約書と同様に利用規約やプライバシーポリシーを変更する必要が生じることがあります。一部の利用規約やプラバシーポリシーでは、「当社は自由に本規約(又はプライバシーポリシー)を変更することができ、変更した場合には変更後の規約が適用されるものとする」といった定めを設けているケースが散見されます。

しかしながら、利用規約も「契約」である以上、契約は相手方の同意なしに変更できないのが民法上の原則であり、特に不利な変更を行う場合には、利用者の認識と同意及び事前通知が必要であると考えるべきです。

 変更した利用規約やプライバシーポリシーに同意していただく有効な方法としては、HP等の利用を想定している場合には、変更後最初に利用者がログインしたタイミングでポップアップ機能を活用して利用規約を表示する等、確実にユーザーが変更後の利用規約を認識したといえる状況にしつつ、規約やポリシーの中で、①変更した場合にはその旨を利用者に事前通知すること、②利用者が当該通知を受領後にサービスを利用した場合には当該変更に同意したものとみなすことを定めること等が挙げられます。

4 おわりに

 以上、本稿のうち、社会情勢の変化に伴う契約内容の変更及び利用規約(又はプライバシーポリシー)の変更の問題について紹介させていただきました。社会情勢の変化は誰も予想することのできない事態ですので、契約当事者が適切な対応をとることで社会情勢の変化によるマイナスの影響を可能な限り小さくすることが重要となることがわかります。本稿では、その他にも契約更新の問題点や法的リスク以外のリスク、CLMサービス等について興味深い記述がなされております。ぜひ一度ご覧いただけますと幸いです。

弁護士 髙木 陽平(たかぎ ようへい)

札幌弁護士会所属。
2022年弁護士登録。2022年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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