『ビジネス法務』2023年10月号の特別企画は「はじめての税務紛争対応」です。この中で「かかわる前に押さえておくべき税務紛争の要点と手続の流れ」(執筆:川畑大弁護士)があります。国税当局による処分を争う場合を中心に、税務紛争に関する各手続きの説明がされています。
- Ⅰ 法務が税務紛争に関わる場面
- Ⅱ 税務調査
- 1登場人物
- 2手続の内容
- 3処分の種類
- Ⅲ 再調査の請求
- 1手続の概要
- 2登場人物
- 3手続の内容
- Ⅳ 国税不服審判手続
- 1手続の概要
- 2登場人物
- 3国税不服審判手続の流れ
- 4訴訟との違い
- Ⅴ 取消訴訟
- 1手続の概要
- 2登場人物
- 3手続の内容
<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>
本記事では、国税当局(税務署や国税局)との間の税務紛争の概要について解説されています。税務紛争に発展するケースとして、例えば、法人税等の確定申告をした後、国税当局から確定申告の内容の誤りを指摘される場合が考えられます。多くの場合は、企業側が国税当局の指摘を受け入れて修正申告(確定申告の修正)を行うため、税務紛争に発展することはありません。もっとも、国税当局の指摘内容が妥当性を欠いており、修正申告に応じるべきではないような場合は、税務紛争に発展する可能性があります。
税務紛争の手続の流れとしては、①税務調査、②再調査の請求、③国税不服審判手続、④取消訴訟の4つです(②については省略可。)。
それぞれの手続をおおまかに解説すると、まず、①の税務調査について、国税当局が納税者である企業に対し、質問検査や資料の提示を求めて事実関係を精査し、修正申告をすべきか否かの調査結果を報告します。納税者が調査結果を踏まえて修正申告に応じない場合、国税当局は、更正(確定申告で暫定的に確定した納税額を増減させる処分)、決定(税額等を確定するための処分)、賦課決定処分(過少申告加算税等の加算税を課す処分)等を行います。これに対し、納税者が当該処分に不服がある場合、②以降の手続を求めることになります。
次に、②の再調査の請求とは、前記①の処分に不服がある場合、当該処分を行った国税当局に対し、処分の取消や変更を求めることができる手続です。前記①の処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内に再調査の請求をする必要があります(但し、例外的に3か月経過後の請求が許容される場合もあります。)。当該手続のメリットとしては、審理期間が短いこと、デメリットとしては、再調査を行う機関と前記①の処分を行う機関が同一であるため、前記①の処分について批判的な検討が十分になされない可能性があることが挙げられます。
そして、③の国税不服審判手続とは、前記①の処分について、国税不服審判所という国税当局とは独立した機関に対し、不服申立てを行う手続です。前記②の簡易迅速な手続を介することなく、当該不服申し立てをすることができます。前記①の処分があったことを知った日の翌日から起算して3か月以内、又は、前記②の再調査の決定書の謄本の送達があった日の翌日から起算して1か月以内に申立てをする必要があります(但し、例外的に当該期間経過後の請求が許容される場合もあります。)。前記②の手続と異なり、前記①の処分を行った行政機関とは独立した行政機関が審理判断を行うため、中立性・公平性が一定程度確保されています。
最後に取消訴訟について、前記③の国税不服審判所の裁決になお不服がある場合、原則として、当該裁決があった日の翌日から起算して6か月以内に、裁判所に対し、前記①の処分の取消を求めることができます。以上が税務紛争のおおまかな流れです。
本記事では、各税務紛争の手続について、より詳細な解説がなされています。この機会に是非ご一読ください。
弁護士 小熊 克暢(おぐま かつのぶ)
札幌弁護士会所属。
2020年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。北海道出身。
協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/)