弁護士法人PLAZA総合法律事務所 PLAZA LOW OFFICE

【ビジネス法務】労働法と個人情報

『ビジネス法務』2024年7月号の特集1は「各法令における個人情報保護法のエッセンス」です。この中で「労働法と個人情報」(執筆:佐々木賢治弁護士)があります。使用者は労働者の採用から退職に至るまで、さまざまな場面で労働者の個人情報を取得し、利用および管理することになります。本稿では、大きく採用時・在職中・退職時に分けて、労働者の個人情報の管理について解説されています。

  • Ⅰ 採用における個人情報管理
  •  1採用に関する情報の取扱いの原則
  •  2病気等の質問
  •  3SNS等、インターネット上の応募者の情報
  •  4不採用とした場合
  • Ⅱ 在職中の個人情報管理
  •  1労働者の個人情報の保護
  •  2労働者の健康情報等
  •  3労働者のモニタリング
  •  4懲戒処分の公表
  •  5労働者による個人情報管理
  • Ⅲ 退職に関する個人情報管理
  •  1退職後の情報管理
  •  2退職者の情報に関する問合せ

<PLAZA総合法律事務所の弁護士解説>

1 はじめに

本稿では、採用から退職に至るまでの、労働者の個人情報の取り扱いについて、解説がされています(元執筆者:佐々木賢治弁護士)。

2 採用時の個人情報の取得

求職者等の個人情報の取得については、本人の同意その他正当な事由がある場合を除き、業務の目的に必要な範囲内で収集、保管、使用をしなければならないと規定されています(職業安定法5条の5第1項)。

例えば、採用後の就労能力確認のために、メンタル疾患等に関する病歴を本人に対して確認することは許容されるものと解されます。

他方で、企業が本人の同意なく、求職者のB型肝炎ウイルスの検査を行った事案において、裁判所は、「特段の事情がない限り、企業が採用に際して応募者のB型肝炎ウイルス感染の有無に関して調査する必要性は認められない。」と判示しました(東京地裁H15.6.20労判854号5頁)。

3 懲戒処分の公表

各企業において定められている個人情報規定の定め方にもよりますが、企業の秩序維持や再発防止のための社内公表であれば、利用目的の範囲内に含まれると解されます。

もっとも、人事院が公表している『懲戒処分の公表指針』では、「事案の概要、処分量定及び処分年月日並びに所属、役職等の非処分者に関する情報を、個人が識別されない内容とすることを基本として公表する」と規定されているので、非処分者の名誉には一定の配慮をすることが必要です。

4 おわりに

今回もお目通しをいただき、ありがとうございました。
本稿では、上記のほかにも、退職後の個人情報管理などについても言及がされていますので、是非この機会に一度ご一読をいただき、ご参考にしていただければ幸甚です。

弁護士 白石 義拓(しらいし よしひろ)

第二東京弁護士会所属。
2022年弁護士登録、同年PLAZA総合法律事務所入所。栃木県出身。

協力:中央経済社
公式サイト(http://www.chuokeizai.co.jp/bjh/

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